原状回復 Ⅱ
原状回復について、もう少し検証
してみましょう。
すでに述べたとおり、
原状回復とは、けして、借りた時点に
戻すことでない。
この事は理解されたと思います。
では、
こんなケースではどうでしょう?
「クロスがカビで汚れていた」
賃貸人はクロス張替え費用を要求するでしょう。
賃借人である、
あなたは次のように反論するでしょう。
「カビは湿気が原因であり、建物の構造上の
欠陥であるから、支払いを拒否します」
すると、
支払え!拒否します!の争いになるで
しょう。
賃貸人から見れば、クロスはカビで汚れ
張替え以外に方法はない。
放置すればカビの菌が拡散されてしまう。
賃借人からみれば、湿気が原因であり、
建物の構造上の問題だから責任はない。
水掛け論は堂々巡りとなり、解決の糸口
さえ見えなくなります。
しかし、解決の糸口はあります。
それは、
双方が妥協点を探りながら話し合う
ことです。
すると、
賃貸人も賃借人も次のような反論をされるでしょう。
「その妥協点がないから争いになるのだ。」
この反論は、
双方が妥協点を拒否するからである。
もう一度、双方の言い分を読んでください。
特に、
賃借人の言い分の中に妥協点が隠されて
います。
では、妥協点とは?
「湿気が原因」です。
この「湿気が原因」ですの、言葉に妥協点が
隠されている事に気がつかれましたか?
なるほど、
湿気は気候風土の問題です。
賃貸人から見れば、
だからこそ、湿気対策を日常の中で
行っていれば。となります。
「日常生活の中」での言葉に、賃貸人の
妥協点が隠されている事に気がつかれましたか?
仮に、
私が、やじろ平の(やじろ平)であったら。
賃借人に対して、次のように言います。
湿気はなるほど気候風土によりますが、
あなたにも落ち度があります。
あなたには、部屋を善良なる管理者として
管理する注意義務があります。
湿気があることは、あなた自身が認めています。
ですから、
あなたは、窓を開け換気を良くする、
壁から少し家具をずらして設置する等々の
措置をとらなくてはならない。
あなたが、それを怠った故に「カビ」が
異常に繁殖してしまったのです。
賃貸人も、全面的クロス費用の請求でなく
「カビ発生」の壁面部分の負担を賃借人に
請求する。
賃借人二分の一・賃貸人二分の一での負担割合。
これが、
賃借人の「湿気が原因」の言葉の裏側に
隠されている(妥協点)であり、
賃貸人の(日常生活)の裏側に隠されている
(妥協点)です。
支払え!拒否します!
この言い争いが双方に(正当性の呪縛化)と
させてしまっているのです。
尤も、
(正当性の呪縛化)から、
ニ分の一割合でも、双方が拒否すれば、
訴訟でしか解決の糸口は見つからないでしょう。
ここで、繰り返しますが、
賃借人には、賃料支払い義務と、善良なる管理者
としての注意義務がある事を認識してください。
次回はペット裁判について。
ペット裁判とは、契約条項(ペット不可)にも
関わらず、ペットを飼い、退去後、原状回復で
争われた判例です。
結論を先に言えば、
簡易裁判から控訴審での地方裁判においても
賃借人が勝訴しています。
ここから見えて来るのは、
(正当性の呪縛化)に対する、
(法理論の凄み)です。
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