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2008年10月 6日 (月)

法理論の凄み

ペット裁判から。

賃借人は(ペット不可)契約条項に違反した

事を一審・控訴審においても(争いのない事)

と認めています。

ここが、

この裁判の重要なポイントであり、

勝訴・敗訴の分岐点でもありました。

つまり、

被告(賃借人)は違反を認め、

原告(賃貸人)は(違反だから原状回復)を

と主張したのです。

賃貸人・不動産業者の方々は、尤もな、

法廷展開と思われたはずです。

また、賃借人の方々も、(違反=原状回復)

となるであろう。と思われたでしょう。

その通りです。

一審・二審とも、この法廷展開がなされました。

但し、(違反=争いのない事)の部分の一点は

ありません。

何故ならば、被告(賃借人)は違反事実を認めて

います。

ですから、

契約条項違反に関しては

原告・被告双方とも(争いのない事)なのです。

ここがポイントでしたが、このポイントが分岐点

でもあった。

では、何故?を解説します。

(契約条項違反)とは、(ペット不可)でしたね。

そして、双方とも、違反に関しては、

(争いのない事)としていましたね。

皆さん、気がつかれましたか?

ペット条項違反は、この時点で終わっているのです。

しかし、

原告(賃貸人)の法廷展開は、

(条項違反=原状回復)での主張でした。

これに対し、被告(賃借人)は「原状回復」での

主張でした。

気がつかれましたよね。

原告は「契約条項違反」が論理の主体であり、

被告は「原状回復」が論理の主体です。

この「論理の主体」が分岐点の重要なポイント

です。

では、

「論理の主体」の相違とは?

この「主体」が(法理論の凄み)そのものなのです。

もう一度、前回の記事を読んでください。

・・・・・・・・・・・・・・・・

畳み張替え・襖張替え・壁クロス張替え・

床CFシート張替え・天井塗装・

網戸張替え・床フロア合板張り・

浴室下段、流し下ベニア張替え・

残材処分費・配水管清掃・

ハウスクリーニング・諸経費

・・・・・・・・・・・・・・・・・

この見積書が重要なポイントでした。

つまり、裁判長は、

この見積書は、リフォーム工事であり、

原状回復ではない。と一刀両断したのです。

賃貸人・不動産業者の方々は、何故?

なのか!と憮然とされたはずです。

ペットによる異臭・損耗等があり、

リフォームしなければ回復しえない!

と思われたはずです。

原告(賃貸人)の法廷展開もそうでした。

しかし、リフォームは次の入居者を募集する

ためのものであり、

それは、あくまでも賃貸人負担と断じられた。

さらに、

損耗等がペット(猫)によるものと

するにたる立証がない。と断じられた。

又、

クロスに付着した猫の毛を除去することが

出来ないからクロスの張替えには合理性がない。

クロスはビニール製であり、

ハウスクリーニングで除去しえる。とも

断じられた。

これが、「法理論の凄み」です。

結論は、

原告・被告の双方が賃貸借契約を締結した

合意内容だけが「費用負担」となる。

合意内容とは?

賃借人が負担すべき費用は、

畳み交換・ハウスクリーニング代のみ。

一審では、(畳み交換・ハウスクリーニング代)

のみであったが、二審では、この二点に消費税

が加算されただけであった。

賃貸人・不動産業者の方々には、おそらく、

納得しえない判決だと思います。

しかし、

これが裁判での(法理論)となるのです。

では、どうすればいいのか?

ペット裁判での、被告は退去後に述べています。

私は契約条項に違反した。

だから、敷金は全額没収されるだろう。

それは、仕方ないことです。

すでに述べた通りですね。

この言葉の裏側に(妥協点)があったのです。

原告(賃貸人)は見積書を提示し、支払え!と

迫った。

被告(賃借人)は(不当請求だ!)と拒否した。

双方が(正当性の呪縛化)に陥った事が

わかりますよね。

原状回復に見られる(法理論の凄み)は、

賃貸人・不動産業者の方々が悩むところでしょうね。

しかし、

打開策は(無い)のか、と言えば、(有り)ます。

次回も原状回復問題を述べたいと思います。

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