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2008年3月30日 (日)

それでも反対

犯罪のないまちづくり条例

各地方自治体で条例において意見募集をしている。

条例の(タイトル)からは、反対しにくいが、私は反対意見を出しました。

私の意見を、そのまま掲載します。

条例案には反対です。

反対理由

犯罪が顕在化している故に条例化する。

逆説的に言えば、もはや犯罪の顕在化を抑制出来ない故に自主防衛をする。

奇妙な論理の帰結である。

鳥取県警の公式発表によれば、犯罪は減少している。

しかし、検挙率は下がっている。

ところが、重要犯罪は高検挙率なのである。

つまり、軽犯罪の検挙率が全体の検挙率を下げているのである。

多くの法学者や市民グループが反対しているにも関わらず、何故かかる条例が実施されるのか?

政府の行動計画を受けて、他県や市町村でも実施されているからの理由にほかならない。

条例案を検討すると、

(基本理念等)と(等)で抽象的表現にしながら、一方で(規定する)と断定もしている。

自主防犯活動等及び防犯環境整備から見えて来るものは、自警団結成・住民相互監視としての隣組制度復活であり、市民生活相互監視体制のなにものでもない。

そこには行政の(市民はすべからず犯罪者である)とする潜在的意識が内在している。

(通報義務)は密告・誹謗中傷の助長にほかならない。

家・共同住宅の建築主に対する建築確認申請時における助言では、建築確認申請において

警察の許可が条件とも読み取れる。

また、防犯設備をできる者と資金面からできない者と大別できる。

防犯設備が出来ない者は条例違反であり、犯罪にあっても違反者だからの図式であり、格差の助長でもある。

駐車場・空地・空家での防犯措置では、防犯灯・監視カメラの設置等と読み取れる。

防犯環境整備は民の財産権への公権力介入にほかならない。

また、逆説的な論理展開をすれば犯罪者擁護でもある。

犯罪者から被害者に対して、被害者も条例違反である。

例えば、空家に侵入されそこで犯罪が発生した場合を想定。

条例に従って防犯措置を施した所有者にはお咎めなしであるが、資金面で措置を講じなかった所有者には条例違反を以って犯罪に加担となりうる。

条例も法である以上、講じた者と講じなかった者との法的格差は生じるはずである。

条例案において罰則規定がない。

何故罰則規定がないのか?この法的格差の矛盾を曖昧にするためである。

(通報義務)において(義務)規定しながら、文言では(努める)としているのも

その曖昧さ故にほかならない。

防犯に配慮した自動車等の普及では、販売業者に防犯装置の普及に努めること。としているが、そのコストは消費者が負うことになる。

つまり、コスト負担に耐えうる消費者と耐えきれない消費者との格差の助長にほかならない。販売業者は条例を根拠にできるが、消費者の選択はふたつしかない。

条例化されれば、結果として、防犯環境整備に名の下に、いたる場所に監視カメラが設置されることになる。

プライバシーの観点からも問題であるが、監視カメラの映像乱用がなされる危険性もある。

公的機関・公共の場などでの監視カメラに対しては、監視カメラ設置責任者への信頼が前提にあり、合理的客観的な理由があるが、個人レベルでの監視カメラ設置には乱用の危惧がないとも言えない。また、市民相互監視体制とも言える防犯上の理由には合理的客観性があるとも思えない。

ゆえに、多くの法学者・弁護士・市民グループが反対する根拠でもある。

冒頭に記したように鳥取県の犯罪は減少しており、条例化しなければならない

根拠は希薄である。

本条例案は他県・市町村で条例化しているから追従するだけの発想にほかならない。

条例化する前に、今一度、憲法問題も含めて検討すべきである。

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